ツィオルコフスキーの式 ~ロケット工学の基礎中の基礎~ (1/2)

●この式がないと始まらない

新しい分野、航空宇宙工学の第一弾です。

とは言え私もど素人に近い状態なので勉強しながらアウトプットもしていきたいと思います。

ロケットというものは荷物(人工衛星や宇宙船)を加速させて所望の軌道に乗せるマシンです。より精密にコントロール可能な大砲の弾であるとお考え下さい。

では、ある速度まで加速するのにどのくらい燃料を積んで、どのようなエンジンを使う必要があるか?をはじめに導き出す必要があるわけです。

●そもそもどのくらいの速度が必要?

例えば、地球の周りをまわる軌道に乗せるためにはどのくらいの速度が必要なのでしょう?以下のような仮定をおいて求めてみましょう。

  地表からの高度 h=100km

  地表での重力加速度 g=9.81m/s2

  地球の半径 R=6378km

必要な情報はたったこれだけです。

地球と人工衛星の間にはたらく万有引力が円運動の遠心力と釣り合うという式を立てます。

遠心力は $$F_c=m \frac{v^2}{R+h}$$

万有引力は $$F_g=G \frac{Mm}{(R+h)^2}$$

これらを等置すると

$$v=\sqrt{\frac{GM}{R+h}}$$

となります。

万有引力定数Gと、地球の質量Mが残ってしまいましたが、地表における万引力がmgに等しいことを踏まえると次式が成り立ちます。

$$mg=G\frac{Mm}{R^2}$$

つまり $$GM=R^2 g$$

これを代入して$$v=R \sqrt{\frac{g}{R+h}}$$

これに数値を代入すると、v=7.9km/sとなります。大変なスピードですね。

東京・大阪間の距離を500kmくらいとすると片道約1分のスピードです。

ちなみにこの式でh=0とすると、地表すれすれをまわる人工衛星となるために必要な速度が計算されます。これを第一宇宙速度といいます。

飛行機は東京・大阪を大体1時間で結ぶので、人工衛星の最小速度はざっくり飛行機の60倍ということになります。上の図は縮尺を合わせて書いています。改めてすごいスピードです。

●ロケットはそのスピードに到達できるか?

前置きが長くなりましたが本題です。どんな重量のロケットにどれだけの推進剤を積めばそのスピードまで行けるわけ?が一番の関心事になります。

後で出てきますが、ロケットは質量に占める燃料の割合が非常に大きく、飛行している最中の質量変化が無視できません。

以下のように、Δt秒間の運動量保存から立式します。

$$mV=(V+dV)(m-dm)+(V-C)dm$$

dV×dmを二次の微小量として省くと、

$$m dV=C dm$$

排気相対速度Cを正の値にしたいので、dm<0と辻褄合わせるためにマイナスをつけます。

$$m dV=-C dm$$

これを積分すると、

$$\int_{V_0}^{V}dV=-C \int_{m_0}^{m}\frac{dm}{m}$$

$$V-V_0=C \ln{\frac{m_0}{m}}$$

はい、求まりました。V-V0をΔVと書くと、

$$\Delta V=C \ln{\frac{m_0}{m}}$$

さらに、噴出相対速度は外気圧と燃焼圧力との差など諸々含んだ有効排気速度Cを使うことが多く、

$$C=g I_{sp}$$

と書けます。gは重力加速度、Isp(specific impulse)は比推力と呼ばれ、推進剤の重量消費率あたりの推力を表し、秒の単位を持ちます。値が大きいほど燃費が良いとも言われます。これを使って書き直すと、

$$\Delta V=g I_{sp} \ln{\frac{m_0}{m}}$$

質量がm0→mに変化する際の速度増分がΔV、それが前後の質量と噴出速度だけで決まるということが読み取れます。もちろん厳密には空気抵抗などを考慮する必要がありますが。

次回で具体的な例を検討したいと思います。


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